2014年8月27日水曜日

湾岸マンション比較(3)構造 [2014年下半期]

構造の点において、3.11 東日本大震災のあとに設計・建設されたタワーマンションは、それまでのマンションに比べて飛躍的に進化しています。

今回紹介しているこの5物件の構造は一般的なマンションと比べると、いずれも防災対策などはしっかりしています。ただ、ここは敢えてということで5物件を比較をしてみてみます。

いずれの情報も情報源は、各物件の公式サイトおよび各社営業担当者さまからヒアリングした内容となっています。


重要な地震対策・耐震等級、から見ていきます。

勝どき ザ・タワー が制震。それ以外については免震、および、免震をさらに進化させた構造となっています。制震と免震については、双方新しい技術ということもあり、一概に免震が良いとは言い切れません。

しかし、(以下、私見です)現状では多くのケースにおいて免震に分があると感じています。僕は素人ですので、難しい話は分かりませんが、一般的にそのように判断されるケースが多くなっています。

1つ目の例として、長期優良住宅認定があります。免震は「耐震等級2と同等とみなす」というルールがあり、また、耐震等級に関わる一部の評価項目が免除になっています。

参考リンク
 住宅性能評価・表示協会
  1-1.1-2.が耐震等級の評価項目ですが、免震物件はこの評価を免除する。とあります。

2つ目の例として、地震保険があります。保険始期が2014年7月以降の地震保険からは、免震物件は日本損害保険協会の指導のもと、「地震保険が50%割引き」になっています。

参考リンク
 日本損害保険協会

特筆したい構造が一つあります。
BAYZ TOWER & GARDEN で採用されているスイングセーバーです。これは兄貴分のSKYZにおいても採用された清水建設の免制震複合技術となっています。地震発生時、免震装置によって地面からの揺れを軽減すると同時に、住居部分の中心に構えた耐震コアが制震装置を介して住居部分を支える構造となっています。

BAYZ TOWER & GARDEN で採用されているスイングセーバー概念図(下図)



ここまで、免震に分があると記載しておいて今更ではありますが、勝どき ザ・タワー が世界で初めて採用をしたVDコアフレームについても、見劣りするものとはなっていません。

一般的な制震装置は、上下階の間に入るものが多いのですが、この場合は制震装置の可動幅が短くなります。それに対して、VDコアフレームは制震装置が3つの建物の連結部分に入っているために、可動幅を大きくとることが出来ており、揺れを吸収する力は高い構造となっています。

勝どき ザ・タワー で採用されているVDコアフレーム概念図(下図)


耐震等級については 勝どき ザ・タワー については1。それ以外は2となっています。地震保険の金額に差が出てきますので、ご注意下さい。

・基礎について
 構造と同様に重要とされる「基礎」ですが、ここについては 勝どき ザ・タワー のみが、直接基礎。それ以外は杭基礎となっております。地盤が硬いところでしか、直接基礎構造とはできません、勝どき ザ・タワー の建築エリアについては地盤が硬いところです。気になる方は東京都が地盤の硬さを発表していますので、以下よりご確認ください。

参考リンク
 東京都の地盤

・液状化対策はいずれのマンションにおいてもなされています。震災後に企画されたマンションということもあり、対策はされていますので液状化の心配はあまりないと思われます。東日本大震災の際にも、これらのエリアでは液状化はあまり見られていません。有明エリアにごく僅かに、という程度です。

代表的な液状化対策方法である「SAVEコンポーザー」のイメージ図(下図)

(クリックすると拡大します)

・コンクリート強度、水セメント比については、現在の技術レベルにおいてはいずれのマンションも最高のものが使われていると考えて頂いて良いと思います。比較対象がいずれも非常に優秀なマンションであるために差が出ていませんが、コンクリート強度が30N以上・水セメント比が50%以下というと「100年コンクリート」と一般的には呼ばれているものとなっており、西暦2100年までも持つ構造となっています。※あくまでも構造としては、です。

・非常用発電機についても、48-72時間と2-3日間は電気がストップしてもエレベーター等は動かせる対策がなされています。

・長期優良住宅については、勝どき ザ・タワー のみ認定なし、それ以外は認定されています。長期優良住宅の評価項目のひとつに「耐震」に関連するものがあり、耐震等級2以上、もしくは免震構造、となっているため、勝どき ザ・タワー は少なくともこの部分は条件を満たしていません。
 長期優良住宅認定がある場合と無い場合ですが、税制上にも2つ違いがあります。
 1つ目として、住宅ローン減税の最大控除金額が、認定ありの場合は500万円(50万円/年×10年)、認定無しの場合は400万円(40万円/年×10年)です。
 2つ目として、固定資産税・都市計画税の減免(半額)期間が、認定ありの場合は取得より7年間。認定無しの場合は取得より5年間、となっています。減免詳細については、以下のリンクをあわせてご参照ください。

参考リンク
 財務省

 東京都主税局
 固定資産税・都市計画税減免:http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/info/nintei-1.pdf

免震・制震の議論はしばらく尽きないことと思います。

ただ、この議論に終止符を打つような出来事は望みません。大きな地震が起きることなく(仮に起きたとしても、免震・制震構造ともに被害が少なく)、何よりも貴重な人命が失われないようになり、免震も制震も(耐震であっても)人命に対しては完璧な構造ですね。となること、願って止みません。

次回は「専有部分」について比較をして参りたいと思います!

12 件のコメント:

  1. 大変参考になりました。次回以降の比較、楽しみにしています。

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    1. 有難うございます。不動産のプロでもない僕がこのような比較をすること自体が恐縮ではありますが、調べられる限りのことは調べて更新して参りたく存じます。

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  2. いつも大変参考にしております。次回の比較、私も楽しみにしております。

    >ただ、この議論に終止符を打つような出来事は望みません。大きな地震が起きることなく(仮に起き
    >たとしても、免震・制震構造ともに被害が少なく)、何よりも貴重な人命が失われないようになり、免
    >震も制震も(耐震であっても)人命に対しては完璧な構造ですね。となること、願って止みません。

    本当にその通りですね。。。

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    1. コメントありがとうございます。次回以降の比較、ぜひ参考になればと存じます。
      100年後くらいには地震にとても強い日本になっていると思いますが、今は過渡期かと思います。都市計画や建築に関わるみなさまの知恵を振り絞って、強い日本になってくれると嬉しいです。僕も出来る限りのところで頑張ろうと思ってます。

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  3. 丹念かつ緻密な比較に脱帽です。
    ちなみに、りゅうたろさんはどちらのマンションを検討されているのですか?

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    1. とんでもありません。素人的な視点でお恥ずかしい限りです。
      僕は今の自宅が中央区のため、中央区のマンションで検討をしております。が、マンションのスペックや将来性を考えると、BAYZやブリリア有明シティタワーも非常に優れており、甲乙つけがたい状態です。

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  4. いつも参考にさせていただいています!
    不勉強で恥ずかしいのですが、液状化対策とは具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?
    液状化は地盤自体の問題のようなきがするので、建物でどこまで対策できるのか、、、といったところが気になります。

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    1. コメントありがとうございます。液状化対策ですが仰る通り、建物で対策を行うわけではありません。地盤に対して対策を行います。

      液状化対策にもさまざまな種類がありますが、比較的よくつかわれている方法のイメージ図を記事内に盛り込みました。本コメントより上にスクロール頂き、ブログ本文内の情報をご確認頂けますと幸いでございます!

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  5. 初めまして、マンコミュでも以前からりゅうたろさんの書き込み拝見しておりました。非常に緻密な比較に脱帽しております。多分同じ物件に住む事になると思いますので、将来お会いできることを楽しみにしております。私も環状2号の広報へ行って色々とチェックしましたので何かと親近感を覚えております(笑)
    BAYZの確認中の項目について手元のパンフに記載がございましたので、ご参考までにお伝えいたします。
     コンクリ強度:30N/㎡~80N/㎡
     水セメント比:45%以下

    私は建築の専門家ではないので素人意見ですが、BAYZのスイングセイバーについて、これって実は通常の免震で免震層にある振動収束のためのオイルダンパを、駐車場と建物の間の鋼材ダンパに置き換えただけだと思ってます。その意味において、免制震と謳っていますが実は通常の免震とあまり変わらない気がしますね(笑) ただし、オイルダンパよりも鋼材ダンパはずっと安価ですしコストパフォーマンスに優れた構法なんでしょうね。加えて免震から独立している駐車場をコアとして間に鋼材ダンパをかますため、振動の吸収効果や建物自体の安定性が向上し、風に対する安定性も向上するので通常の基礎免震よりは進化している構造と言えそうです。なんとなく基礎免震と大林組のDFSを合わせたような構造ですね。

    KTTのVDコアフレームは仰る通り通常の制震よりもかなり吸収効果が高そうですよね。トライスターで3棟の根本に揺れの歪が集中する事を活用した工夫された構法だと思います。鋼材ダンパではなく高価なオイルダンパを99本も使ってますし結構コストをかけた制震構造だと思うのですが、一般には免震>制震のくくりでとらえられてしまうのが勿体ないなと思っています。

    色々と取り留めない書き込み失礼いたしました。次回以降の更新も楽しみにしております。

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    1. ご連絡大変有難く存じます。「湾岸再開発の軸は環状2号線にあり」にご共感下さり、その後の書き込みも嬉しく拝見しておりました。いつかのタイミングでお会いできること大変楽しみにしていたところ、思ったよりも早めに接点が持てたこと、嬉しく思います。

      また、BAYZの件についてもお教え下さってしまい大変有難く存じます。さっそく、ブログを修正致しました。スイングセイバーですが、まったく仰る通りですね。僕も最後の最後の見方としては、基礎免震よりもわずかに進化しているように感じました。

      いつか是非ご挨拶させて下さい。末永くお付き合い出来ますと嬉しく存じます。
      また、節々でお気遣いも頂いてしまっており痛み入ります。

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    2. 丁重なお返事いただき有難うございます。

      私も何度かあちらに書き込みしておりますが、仰られる「湾岸再開発の軸は環状2号にあり」への共感を書き込みされていたのは別の契約者さんかもしれません。ただ自分も全く同じ気持ちでしたので大いに頷きつつ書き込み拝見させて頂いておりました。昨今のBRT関連のニュースを見るにつけ、改めてその感を深めております。私は今新宿に近い山の手在住なのですが、湾岸に住み替える決意をした最大の理由が選手村や築地跡地など大規模開発とインフラ整備が予定されつつも、どこまで発展するか予測できないワクワク感といった物でした。湾岸は賛否両論のある地域ですが、今後もさらに良い変化が起こると信じて楽しみたいと思います。

      入居まで大分先となりますが、いつかりゅうたろさんとリアルでご挨拶出来る日を心待ちに致しております。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
      ※コンクリ強度の単位が誤っており大変失礼いたしました。正しくはN/m㎡ですね。。

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  6. 返信が漏れており申し訳ありません。ぜひとも、こちらこそどうぞよろしくお願い致します!また、コンクリ強度ですが、単位についても修正しておきます。こんなブログを書いておりながら、もともとは全く知識がない人間ということもあり、基本的な知識の欠落、何卒お許し下さい。

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